宮崎県の薬剤師界をけん引してきた喜島健一郎さんが語る「医薬分業」

約四半世紀に亘り、宮崎県薬剤師会の会長・専務理事という重責を担い、宮崎県の薬剤師界をけん引してきた株式会社プロフェツショナルファーマシーズの代表取締役 喜島健一郎さん。先日、半生記『山茶花( さざんか) の呟き』を上梓した喜島さんに「医薬分業」について、また著書に込めた想いなどについてうかがいました。

喜島健一郎さん_Profile

[【Q】喜島さんは長年、宮崎県薬剤師会の会長・専務理事も務めてこられました。 昨今、「医薬分業」が進んでいますが、そもそもなぜ「医薬分業」は必要なのでしょうか?]

約四半世紀に亘り、宮崎県薬剤師会の会長・専務理事という重責を担い、宮崎県の薬剤師界をけん引してきた株式会社プロフェツショナルファーマシーズの代表取締役 喜島健一郎さん。先日、半生記『山茶花( さざんか) の呟き』を上梓した喜島さんに「医薬分業」について、また著書に込めた想いなどについてうかがいました。

喜島健一郎さん_Profile

【Profile】
1947年生まれ、鹿児島市出身。 1970年、東邦大学薬学部卒業後、東京田辺製薬株式会社( 現・田辺三菱製薬株式会社) に入社。 1978 年に同社を退社し、現・株式会社プロフェツショナルファーマシーズを設立。現在は、本店たちばな薬局、たちばな薬局旭通、たちばな薬局きりしま、かのう薬局の4つの薬局を運営する。

また、1980年から16年間、宮崎県薬剤師会専務理事を務めた後、2000年から2009年まで同会の会長に。宮崎西ロータリークラブ所属。

座右の銘は、荀子の言葉で、義を先にして、利を後に成せという意味の「先義後利( せんぎこうり)」。ストレス解消法は、奥さんとドライブを兼ねて、食事に行くこと。


【Q】喜島さんは長年、宮崎県薬剤師会の会長・専務理事も務めてこられました。 昨今、「医薬分業」が進んでいますが、そもそもなぜ「医薬分業」は必要なのでしょうか?

【A】
医薬分業」とは、薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師、薬剤師という専門家が分担して行うことを意味します。

その歴史は古く、13世紀初頭にまでさかのぼります。当時、欧州では小国が乱立し、領土や皇位継承を巡る争いが絶えませんでした。皇族たちは毒味役を置いて身の安全を図ったのですが、ついには、その疑いは医師の出す薬にまで及んだのです。そこで、神聖ローマ帝国の皇帝フリードリッヒⅡ世が発布したのが、5ヶ条の勅令です。この勅令の大きなポイントは、病気の治療を行い、死亡診断書も書く医師が、命を奪うことも可能である薬剤を取り扱ってはいけないと、その役割を明確に分離したところにあります。そこに薬剤師の出自があり、またこれこそ、薬剤師のアイデンティティーでもある、と私は考えています。

日本における「医薬分業」は、明治の初めからスタートし、以後いくどかの法改正を経て、現在に至っています。

医学の専門家である医師と、薬学の専門家である薬剤師が分業しながらも、互いに協力し合い、より良い薬物療法を行う。そうすることで、患者さんの安全性をより高めるとともに、なおかつ、最小の薬剤で最大の効果を図ることにより、薬剤費の適正化にもつながっているのです。ですから、病院で処方箋を出し、その薬を薬局でもらうというのは、一見二度手間に思えるかもしれませんが、その二度手間こそ、なくてはならないものでもあるのです。


【Q】御社のホームページで拝見したのですが、薬剤師さんが処方箋で指示された薬を処方するまでには、約20もの確認事項や作業があるのですね?

【A】
一例を挙げれば、薬歴の確認であったり、薬品名や分量・用量のチェックであったりと、確認することは多岐に亘ります。その過程で、時折、「これは?」と思うケースに当たることがあります。というのは、まれに「他の病院にかかっていますか?」と医師に聞かれても、答えづらいのか「いいえ」と話される方がいるんですね。

しかし、薬には副作用もありますから、その薬を処方することで、別の病気の症状を悪化させる可能性もあるわけです。ですので、医師には、病気のことは隠さずに話す、ということを心がけていただければ、と思います。

また、中には「薬を出すまでに、時間がかかり過ぎる」とおっしゃる患者さんもいらっしゃるのですが、逆に言えば、それだけ安全性に気をつけているということでもありますので、ぜひご理解いただけると幸いです。

残念ながら、薬剤師という仕事は、その職務上の特質から医師や看護師と違い、患者さんとコミュニケーションを図る機会がそう多くはありませんので、仕事に関して、なかなか理解を得られないきらいがあります。さらに言えば、先ほどお話ししました「医薬分業」に関する法律には、いくつかの例外規定も設けられていて、それに該当する場合は、医師は薬剤師に処方箋を出さずに調剤することが認められています。ここが、薬剤師の独立した職能の確立という観点からは、大きな障害になっているのも事実です。

それをクリアするために、我々がなすべきことは、多少口はばったい言い方になってしまいますが、日ごろから人として、患者さんに信頼される態度、生活を薬剤師ひとりひとりが心がけること。これに尽きるのではないか、と思います。

薬学で学ぶことの本質は、生活科学です。薬剤師法には、地域の生活者ひとりひとりの健康づくりに寄与することもうたわれていますが、かつて薬剤師が「街の科学者」と呼ぼれていたように、我々の知識なり、経験をほんの少しでも地域のみなさま方のために役立てること。そして、それを何年、何十年と続け、積み上げていく。薬剤師界全体で、その取り組みに挑んでもらうことを、切に願ってやみません。


【Q】 先日、エッセイ集でもあり、半世記でもある著書「山茶花(さざんか)の呟き」を上梓されましたが、本を書くことで新たな発見、気づきはありましたか?

【A】
今回、本を書くことで得た一番大きなことは、カッコつけずに、人より劣っているところも含めた本当の自分の姿を、人様の前にさらけ出す勇気をもらった、ということでしょうか。

当初は、やはりいろんなことを考えましたし、悩みもしました。けれども、どうせ書くのであれば、本当の自分の想いや姿を表現しなければ意味はありません。

ひとりの男として、また夫、父親、薬剤師、そしてロータリー活動に励んでいる、ありのままの等身大の私。それぞれの私の姿や言動に触れ、その上で認め、評価してくれた……、いまは独立して、それぞれに幸せな家庭を築いている子どもたちの言葉。それらは、本当に貴重で何者にも代え難い、大きな喜びでしたね。


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