宮崎県内で25年ぶりの農林水産祭「天皇杯」受賞!!
地域一丸となった田代地区の取り組みとは?

むらづくりの最高賞「天皇杯」を受賞

[稲作と畜産の盛んな田代地区]

むらづくりの最高賞「天皇杯」を受賞

田代自治会が、 「平成25年度第52回農林水産祭」のむらづくり部門で最高賞の天皇杯を受賞しました。 住民総出での水路の保全活動の取り組みや伝統文化の継承、祭りなどを通じた世代間交流など集落の一体感と世代間の結びつきなどが、全国のむらづくり活動のモデルとして高い評価を得て、今回の受賞となりました。
宮崎県内のむらづくり部門での受賞は、昭和63年の諸塚村に次いで25年ぶり、2回目の受賞です。
農林水産祭むらづくり部門は、むらづくりの全国的な展開を助長し、地域ぐるみの連帯感の醸成とコミュニティ機能の強化を図り、農林漁業と農山漁村の健全な発展に資することを目的として開催されています。 本年度は、492点から部門ごとに天皇杯や大臣賞などが選ばれました。 各賞は、農産部門、園芸部門、畜産部門、蚕糸・地域特産部門、林産部門、水産部門、むらづくり部門の7部門に授賞されます。
表彰は、11月23日の勤労感謝の日に明治神宮会館で開催される農林水産祭式典で行われます。


稲作と畜産の盛んな田代地区

田代地区は、えびの市の南西辺縁部に位置し、地区内で管理する湧水を利用した水稲栽培や天宮台地上部での野菜栽培、畜産業等が盛んな地区です。総世帯数は、124世帯、うち、44%の54戸が農業を営んでいます。
田代地区は、豊富な湧水を成り立ちの起源とすることから、古くから、住民の共通認識として、 「水」に対する感謝の念が継承されています。 そのため、「陣の池」などの保全、水車の建設などを行い、地域資源を守り続ける活動を行っています。
伝統芸能では、 「天宮神社」に伝わる「打植祭」の若者への伝承など、郷土の伝統を守ろうという世代を超えた共通の価値観に基づく活動が行われています。


若者を中心としたさまざまな活動

田代地区では、地域の若者が団結し、結成した「田代ひまわりロードプロジェクト」の活動が、農業生産面・生活環境面の双方で、地区の活性化に大きく寄与しています。
活動は、 「ひまわりロードまつり」の開催等による他地域との交流、 「公民館だより」の発行による地区内への情報発信、合意形成への寄与、ソバ打ち大会の開催による地区内の連携などを行っています。 このような活動は、各世代間、各組織間の潤滑油となり、地区の一体感の醸成に大きく寄与しています。


地域が一つとなる取り組みの軌跡

田代地区は古くから豊かな湧水を利用した水稲栽培が盛んに行われてきましたが、 ほ場は区画も狭小で散在し、生産効率が良いものではありませんでした。そのため、平成4年度から市内の他地域に先駆け「中山間地域農村活性化総合整備事業」を取り入れ、農業生産基盤と生活環境基盤の整備を一体的に行いました。この事業により農業者間の結束は強まりましたが、保全管理活動などは農業者が行うべきものという考えが根深く残り、非農家との交流は、 ほとんど行われない状況でした。
しかし、地区住民の心の中には、 「農業従事者の高齢化の中、 保全活動には、限界がある。このままではいけない」との思いが募っていました。
地区民同士が心の中で葛藤を続ける中、地区では、平成12年度、 「中山間地域等直接支払制度」 、 平成19年度、 「農地・水・環境保全向上対策」への取り組みが開始されました。
取り組みが始まった時は、非農家の参加を呼び掛けることは難しい状態でした。しかし、農業従事者が中心となり、地区内での施設管理の重要性等を自治会活動などを通じて、地道に説明をした結果、 「地区内の資源はすべて地区住民の宝である」との共通の認識を共有することができました。 今では、農道や水路の整備、 周辺隣地の草刈等、一人では困難な保全管理活動を地区民総出で行うようになりました。
これらの取り組みを契機に、農作業受委託組織として「田代農用地利用組合」が設立されました。この組合は、田代地区の農業の担い手として中心的な役割を担っています。
田代地区では、 種々の努力によって、将来にわたり農業生産活動を維持するための体制整備が整いました。
同時に、これらの体制を基礎としながら、若手農業者を中心とした「田代ひまわりロードプロジェクト」が設立されました。現在、この組織には、地区へのU・Jターン者や新規就農者を含む23人(年齢構成21~44才・うち女性6人)が所属しています。
今では、この組織の活動が、農業生産面・生活環境面の双方で、地域の活性化に大きく影響し、田代地区を引っ張る存在となっています。


田代ひまわりロードプロジェクト
地域活性化の起爆剤

田代ひまわりロードプロジェクトでは、地区内の農道や農業用施設へのひまわりの植栽を平成21年に行いました。平成22年からは、「ひまわりロードまつり」を開催し、30年ほど前に途絶えていた地区の夏祭りを復活させました。祭は、地区内はもちろん、地区外からも多くの来場者が訪れ、他地域との交流の大きなきっかけとなっています。また、同プロジェクトメンバーの結婚式をひまわり畑で行うなど新たな取り組みを行っています。
その他にも、公民館だよりの発行、ソバ打ち大会などを行い、地区内の連携、世代間の交流を図っています。平成22年からは、ひまわりの種から食用油を搾油するなど地域資源の開発を行っています。


地区のシンボル「手づくり水車」
水の恵みに感謝

田代地区では、古くから「水」に対する感謝の念は強く、「水を保全する意識」は、職業を問わず、地域に根付いていました。この「水」の恵みに感謝し、地域資源を住民全員の財産として目に見える形で表すため、地区のシンボルとして、平成24年に、地区内の水路沿いに水車の建設を行いました。
建設にあたっては、地区内の技術者からの指導を仰ぎながら、住民の手作りで完成させました。平成25年にはこの水力を利用した小水力発電による防犯灯の設置も計画しています。


受け継がれる打植祭
郷土芸能の保存

田代地区では、旧薩摩藩で見られた行事が現在でも数多く受け継がれています。中でも、五穀豊穣を祈願する祭りとして、田代地区の「天宮神社」と隣接する今西地区の「香取神社」と合同で行われる「打植祭」は、平成13年に宮崎県無形民俗文化財に指定されました。
 少子高齢化により、伝統の継承が危惧されていましたが、「田代ひまわりロードプロジェクト」を仲介役として、高齢者クラブや子ども育成会など、関係団体が密接に協力関係を築き、甘酒、しめ縄づくり等の技能継承など、地域全体で、この祭りの伝承活動に取り組んでいます。


『住んで良かった、住みたいと思えるまちづくり』
田代自治会・前原良一会長

受賞の話を聞いた時、とても信じられませんでした。今では、いろいろなところで「田代の人やろ、おめでとう」と声をかけてもらえます。
先輩たちが築き守ってきた「水」に対する感謝の気持ちを受け継ぎ、天宮神社や陣の池、用水路などを地域住民が一丸となって守ってきた取り組みが評価され、とてもうれしく思っています。この賞は、地区住民みんなで取った賞です。この受賞により、今まで以上に地区民の結束が強くなりました。
農家・非農家に関わらず住民の人には、いろいろな取り組みに協力をもらい感謝しています。
特に、地区の若者には、30年ほど前に途絶えていた田代地区内の祭の復活やひまわりの植栽、ひまわりロード、公民館だよりの発行、ソバ打ち大会、打植祭でのしめ縄づくりや甘酒づくりなど積極的に協力してもらっています。地区内の連携、世代間の交流などに一役かってもらっています。ありがたいことです。
今後は、今の子どもやその子どもから生まれてくるであろう子どもたちが、田代に住みたい、田代に住んでよかったと思えるようなまちづくりと、他の地区からも田代地区は、すごく魅力的な地区だと思われるよう地区を越えた交流などを行いながら田代地区の魅力を発信していきたいと思います。えびので一番の地区と言われるようこれからも、地区民一丸となってがんばっていきます。
田代地区では、夏のひまわりロードや打植祭などさまざまなイベントを行っています。ぜひ、一度遊びに来てください。


『田代からえびのを発信えびのを盛り上げたい』
田代ひまわりロードプロジェクト・池田憲行代表

私たちは地区を盛り上げていきたいという気持ちだけで活動をしてきました。天皇杯の受賞を聞いた時は、冗談だと思いました。受賞できたことはとても誇りに思います。
田代ひまわりロードプロジェクトを立ち上げたきっかけは、 自治会長の 「若いもんたちで何かやってみらんか」という一言で始まった飲み会でした。私たちは、子どものころ、運動会や祭りなどを一生懸命に盛り上げてくれた親の背中を見て育ちました。同じような活動をしたいという気持ちをそれぞれ持っていましたが、踏み切れないでいました。自治会長の一言が私たちを動かしました。
平成21年に『 「楽しい」と思ったことは、 「すぐに」 、 「できることから」 、 「まずは」やってみる、でも、 「背伸びはしない」 』をモットーに「田代ひまわりロードプロジェクト」を立ち上げました。活動としては、農道や農業用施設へのひまわりの植栽、30年ほど前に途絶えていた夏祭りの復活などです。祭では、地区のみんなに楽しんでもらっています。今では、 毎月1回の 「公民館だより」の発行、地区で生産されたそば粉や野菜を利用したソバ打ち大会なども行い、地区内の交流を図っています。
これからは、天皇杯という賞の名に恥じないよう、背伸びはせず、自分たちでできることを自分たちの形で行っていきたいです。田代地区からえびのを発信し、えびのを盛り上げていきたいです。


世代間の交流の広がりが地区内の活動を活発化する原動力

全国の多くの地域で、さまざまな手法によるむらづくり活動が行われています。 その多くは、単一世代や、ある一定の参加者がその信念に基づき牽引していく取り組みです。
それに対し、田代地区のむらづくりは、地区の若者が活動の中心になりながらも、世代間、組織間のパイプ役となり、これまで継続されている活動と新たな活動を融合した、いわば、むらづくりに新しい価値を創造する取り組みです。 今や田代地区民の連携、世代間の交流の広がりなどは、地区内の諸活動が活発化する原動力となっています。
少子・高齢化による急激な人口減少、農業後継者の確保など、えびの市は多くの課題を抱えています。 そうした中で、守るべき価値観を共有しながら、新たな発想を大切にし、地区を構成する年配者と若者、女性が、同じ距離感で活動に取り組んでいる田代地区のむらづくりは、えびの市の今後のまちづくりのモデルとなる取り組みです。 田代自治会の受賞を機に、市内の自治会活動が活性化することが期待されます。


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