「笑みFULL」で、作り手の笑顔が見えるお弁当を買うしあわせ 

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「笑みFULL」で、作り手の笑顔が見えるお弁当を買うしあわせ 

「早い日は、開店10分後には全部売り切れるんですよ」。
そんな話を聞いたものだから、開店10分前には、店横の駐車場に車を停めていた。

門川町の庵川地区。
静かな海沿いの通りに、シャッターの下りた小さなお店があった。その前には、すでに開店を待つ人がちらほら。
わたしもそこに混じりながら、いったいどんなお弁当なのだろうと、期待をふくらませた。


調理師の母と、管理栄養士の娘。
漁業を営む家の母娘が切り盛りする、お店の名前は『笑み FULL』。

シャッターが上がり、のれんが掛けられる。
「お待たせしました」
いよいよ開店だ。


店に入ると、正面には大きなテーブルに、お弁当がずらり。
チキン南蛮、生姜焼き、味噌だれチキンカツ。
お肉とお魚のおかずを一緒に楽しめるMIX弁当もある。
お魚は、店主の父や弟たちが水揚げしたものがその日のうちにおかずに加わるらしい。
門川の新鮮な海の恵みが家族の手を渡り、たくさんの人のお腹を満たす。
漁師町だからこそ味わえる、ちょっと特別なしあわせだ。

⋯さて、どれにしよう。
迷っている間にも、次々と人が入ってくる。


お弁当はどれも、メインのおかずがわんぱくで、頼もしい。
その隣には、カラフルできれいな副菜が隙間なく並べられている。
メインも副菜も日替わりで、管理栄養士の娘さんがメニューを考案しているという。
毎日通っても、きっと飽きないだろう。

この日は、かぼちゃとほうれん草とナッツの和え物と、きゅうりとカニカマの酢の物。
近所の人から、「お裾分け」と言って季節の野菜がよく持ち込まれるらしい。
その野菜を眺めながら、「今日は何をつくろうか」と考え、新しい一品が生まれる。
そんなふうにして、日々の暮らしの中から、このお弁当は生まれているのかもしれない。

うかうかしていると売り切れてしまうので、まずは確保。
私はMIX弁当を選んだ。
お弁当を手にしてから、もう一度、店内をゆっくり眺めてみる。


お店の壁には、大きなフラワーアレンジメント。
店奥には、貝殻や浮きをロープで吊り下げたハンギングガーランドが飾られていた。


光を受け止めて時折キラキラと輝く。
どちらも、お弁当の彩りとよく似合っている。
貝殻や浮きは、門川の海から集めてきたものだという。
お弁当と、海の町の営みが、ここでもさりげなくつながっている。


片隅の本棚には、門川の魚に関する図鑑や絵本が並んでいる。
学校帰りの小学生が立ち寄って、宿題をして帰ることもあるらしい。

お弁当を買う場所だけれど、それだけではない。
小さな店の中に、町の日常が少しずつ集まっている。


――そうして店内を眺めていると、扉がガラッと開いた。
「お、今日はまだ残っちょるね!」
地元のおじさんが笑顔で入ってきて、迷う様子もなく、パパパッとお弁当を三つ手に取る。
「電話くれたら取っちょくのに〜」
店の人も笑顔で軽く返す。


顔なじみ同士の関係が滲む、そんな軽いやりとりも、この店に通う楽しみの一つなのかもしれない。


……とか考えていたら、目に入ったのは、「ふわもち豆腐ドーナツ」6個150円。
こういうのには弱い。迷わず手を伸ばす。

おじさんのあとに続いて、私もレジへ。
お弁当ひとつと、ドーナツ。
今日のお昼は、お腹いっぱい間違いなしだ。


【MIX弁当の実食レポート】

この日のMIX弁当は、たまごタルタルがたっぷりかかったチキン南蛮と、太刀魚の竜田揚げ。
どちらもごはんが進むけれど濃すぎない絶妙な味付けで、どんどん箸が進む。
汗を流したあとなら、きっとさらに美味しいだろう。漁師町で食べるごはんに、しっくりくる味わいだと思った。
一方、副菜は素材の旨みを感じる、やさしい味付け。
しっかり味のおかずの合間には、やさしい味の副菜。
食材そのものの味が感じられて、箸休めにちょうどいい。
そして、楽しみにしていた卵焼き。甘くて、ふわふわ。
おいしくて、一気に食べてしまうのが惜しい。三口に分けて、大切に食べる。
つくってくれた人の笑顔が浮かぶ。
それだけで、ちょっといい日になるんだな。
そんなことを思った。


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